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すべてが凍り付いた…標高1200m氷点下のキャンプ場での冬キャンプ

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標高1200mの山で最高気温-4℃、最低気温-13℃というとても寒いキャンプ場で、友人とのソログルキャンを体験された田中さん。氷点下のキャンプとはどういうものでしょうか。持参した水が朝には凍っていたり、お酒がシャーベット状になっていたりするアクシデントがありながらも温かい食事や寝具のおかげで無事に一晩過ごすことができたそうです。

#01すべてが凍りついた…標高1200m最低気温-13℃のキャンプ場での冬キャンプ

スタッフA1

冬キャンプ、本当に寒いところでやってみるとどうなんでしょうか?

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ワシの友達がなかなかハードな冬キャンプをしとるから、覗かせてもらおう!

[執筆者情報]

田中一馬さん プロフィール写真

田中一馬さん
キャンプ歴3年、ソロキャンプを中心に行っているアウトドア系ライターです。バックパックキャンプを行うため軽量コンパクトなギアを好んで使用。料理好きなためクッカーにこだわりがあります。

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https://www.instagram.com/solocampfreaks

すべてが凍りついた…
標高1200m最低気温-13℃のキャンプ場での冬キャンプ

写真:キャンプ場内の川の様子

キャンプ場内の川の様子

事前に調べた当日の予想気温

事前に調べた際の予想気温

ある日の冬キャンプの話。キャンプにハマったばかりの友人とソログルキャンプ(ソロキャンプスタイルでのグループキャンプ)の予定があり、予定日が近づいてきたため私はいつものように当日の天気をチェックしました。
すると見慣れない値に目を疑いました。最高気温の数値に「-」が付いていたのです。当日の予報では「最高気温-4℃、最低気温-13℃」という予想気温。
調べたところ、食品衛生法では冷凍食品を保存するための温度は-15℃と定められており理由としては微生物の繁殖が抑えられる温度とのこと。
おかげで今回のキャンプでは食あたりの心配が少なくなったものの、その数字のインパクトの大きさは、キャンプ経験が浅い友人が職場の仲間に心の底から心配され、家庭用のガス缶で動くガスストーブを届けられるほどでした。

仕事のストレスから解放される場所

キャンプ場近くで撮った写真

キャンプ場近くのパーキングにて

待ちに待ったキャンプ当日。当日までの天気が悪かったため凍結や積雪で道路の状態が心配でしたが、キャンプ場に近づき路面を確認すると凍結はしておらず雪が多少残っている程度で問題なく到着できそうで安心することができました。仕事のストレスをキャンプで発散している2人はこの日のために準備したキャンプ道具を積み、意気揚々とキャンプ場に向かいました。

キャンプ場の概要

キャンプ場内の川の写真

キャンプ場内の川

キャンプ場に到着
状況をイメージしやすくするために、今回のキャンプ場がどのようなところであるか紹介しようと思います。ここは高度1200mほどの場所にある山の斜面を切り拓いて作られた場所で、きちんと整備されているがもともとの自然の地形や状態がそのままに残されたところが魅力のキャンプ場です。
水道は管理棟以外にはなく、それ以外には水を持参するか川から汲むくらいしか調達の手段はない。薪は販売しているが場内に落ちている枯れ木を利用することもできます。フリーサイトのみであり、もちろん車でサイトまで向かうことなどできないので駐車場から設置されている台車に乗せて運ぶか、バックパックに荷物をパッキングして運ぶというような環境。

簡単にいうと、山で野宿する状態にかなり近いと思います。時期によっては鹿やサルなどが群れで歩いているのが観られるほどで、仕切りのようなものはなく、夜はシカがテントの至近距離を歩いてくる。キャンプ場として長年運営されており動物による事故などは起きておらず、静かな環境を求めるソロキャンパーにおすすめの場所だと思います。私たちは自然の中に溶け込める感覚が味わえるこのキャンプ場を以前からとても気に入っており、今回もこのキャンプ場を選ぶことにしました。

設営と薪の調達

枯れ木を集めて焚き火の準備

枯れ木を集めて焚き火の準備

今回もやはり人気のない場所が良いので、駐車場から一番遠く山の頂上方向に坂を上った場所を選択し設営を始めることにしました。テントが準備できたら薪集めです。枯れ木が立ち並び周囲に山の尾根が見える森の中、乾いた落ち葉の上を歩きながら焚き火に適した枯れ木を探します。地面に落ちているものではなく立木にもたれかかっているような乾いた倒木を見つけ、持参したノコギリでカットして薪の準備は完了です。薪づくりで体温が上がり、風はかなり冷たいが陽射しが当たればほんのりあたたかく、「夜は寒いけどなんとかいけそうだね」などとその時は話していました。

冷え込んできたため湯たんぽを準備

ひざ掛けとインナーシュラフの中に湯たんぽを挟んだ様子

ひざ掛けとインナーシュラフの中に湯たんぽを挟んだ様子

設営が終わり、じっと座ってみるとやはり寒い。さらに周囲が暗くなるとやはり気温の低下に対して危機感が増してきたためお湯を沸かし、寝る前でもないのに湯たんぽ準備し始めることに。冬はひざ回りに風が当たると寒さを感じるためひざ掛けをいつも使用しており、今回はさらに寝袋に入れるインナーシュラフを重ねてその中に湯たんぽを入れました。これがとてもあたたかく体温の維持だけではなく、後述する翌朝のトラブルに対しても助けられることになりました。
その時、向かいのテントではガスストーブの頼もしい作動音が鳴り響いており、2人を励ましてくれているようでとても頼もしく感じました。

待ちに待った時間

チョリソーとピーマンが入ったオムレツ

チョリソーとピーマンが入ったオムレツ

何はともあれ、最大の楽しみであったお酒を飲み始めることに。本来ならあたたかいものを飲んで体温を上げたいところだが最初は生ビールからと世間では決まっています。微生物の繁殖の心配などしていないのに自然とキンキンに冷えているため、いくらなんでもこれは酔えないのではないかと心配になったが、徐々に口数が増えいつの間にか盛り上がっていました。
私は料理が好きで、盛り上げる意味もあって普段友人たちとキャンプする時は毎回凝った料理を作っています。しかし、この気温ではそんなことは言っていられず、今日は簡単であたたまる物を作りエネルギーを補給して体温を保つこと優先するべきだと考えていました。とりあえず、適当に買ってきたチョリソーとピーマンを炒め、卵をのせてオムレツを作り、それをつまみながらその後も飲み続けました。

体をあたためてくれた「ほうとう」

鰹節と小さい鍋の写真
カツオ出汁を取っている様子

取り出しやすいように小さなザルに入れて鰹出汁を取っているところ

湯気の立つほうとうの写真

湯気が立ったほうとう

順調にいきそうでいかないことが多いのがキャンプ。酔いがまわってきたせいなのか、いつものクセがでてしまったのです。体を温めるため「ほうとう」を準備しはじめたところでした。手早く作るため冷凍の豚汁の具とカットされたカボチャを用意しており、麺と味噌を入れて煮込めばすぐにできあがるはず。しかし、その当時、出汁をとることにハマっていた私は「粗削りの鰹節」を持ってきていたことを思い出し、こんな極寒の山中でダシを取り始めてしまったのです。夜勤明けで疲れている友人は、今か今かと出来上がりを待っており急かされたが、味の方が重要なので耳をふさぎ鍋の中で踊る鰹節を見つめ黙々と出汁をとることにしました

缶チューハイがシャーベット状に

缶チューハイの写真
ひざ掛けに落ちた水滴が凍った様子

ひざ掛けに落ちた水滴が凍った様子

当日の夜中の気温

当日夜中の気温

ほうとうが出来上がり食べてみると、鰹出汁が効いたとろみのある熱いスープがとてもおいしく、体もあたたまったためこのメニュー選びは大正解でした。その時、気温を確認してみると-10℃まで下がっており、ひざ掛けに垂れた水滴がそのまま凍ってしまうほどの寒さでしたが、まだまだ飲み足りない私はチューハイの缶を開けることにしました。飲んでみるとなぜかシャリシャリしている。外に置いていた缶の中身は自然とシャーベット状になっていたのです。さすがにこの状況で飲んでいる場合ではないことにようやく気付き、そろそろテントに入ろうかと思ったところ、ふと見ると寝不足の友人は寝袋に入らずストーブの横で眠ってしまっていたのです。その時TVドラマで見る雪山での遭難のシーンで頬をはたいて起こすシーンが頭によぎったのですが、かわいそうなので、ここは普通に起こすことにし、彼は起こされるとごそごそと寝袋の中へもぐっていきました。

無事に朝を迎える。

水を入れていた容器のふたが凍っている様子

水を入れた容器のふたが凍った様子

焚き火の煙と朝の山の風景

焚き火の煙と朝の山の風景

友人が作ってくれたホットサンドの写真

友人が作ってくれたホットサンド

友人が投稿したインスタグラムの写真

友人が投稿したInstagram

湯たんぽ、インナーシュラフ、ホッカイロ、テントシューズなど防寒のための道具を準備していたため、問題なく朝を迎えることができました。テントから出ると澄んだ空気に、朝日に照らされた山々の輪郭がくっきりと浮かんでとてもきれいでした。
寝袋から出ると体がすぐ冷えていき、手はかじかんでいく。体をあたためると同時に水分補給をしたいためヤカンに水を入れようとしたところ、容器に入れてきた水がガチガチに凍ってしまっていたのです。お互いに自分の分しか水を持ってきておらず、分けてもらうと友人の分がなくなってしまう。体が冷えきっている中で下の川まで汲みにいかなくてはならないのかと思い、友人の横にある水の入ったペットボトルをうつろな目で見つめ、途方に暮れていたところ、湯たんぽに入れた水は凍っていないことに気づき、友人と揉めることなくなんとかお湯が確保できました。
昨日私が起こさなかったら凍えていたことであろう友人は起きると元気を取り戻しInstagramの投稿をしながら、今回のために購入したというホットサンドメーカーでホットサンドを作っていました。こんがりと焼かれサクサクしたパンの間からハムとチーズがあふれ出てきて非常においしかったです。ゆっくりいただいて山の朝の雰囲気を味わい、車まで戻りました。

下山し温泉とカレー

レストランで食べたカレーの写真

レストランのカレー

車中で「きのうは寒かった」という話を繰り返し、無事に生き残った喜びを確認し合いながら車を走らせました。
途中、道の駅にある温泉に寄り温泉に入ると、寒風にさらされ乾燥し冷え切っていた肌がピリピリしました。だんだんとあたたまっていくと、冷え固まった肌がほぐれていくようでした。湯上りに併設されたレストランでおすすめだというカレーを食べるととてもおいしく、これも旅のひとつの思い出になりました。

これだけの思いをしながらまた同じ場所に行くのだろうなと思い、キャンプが終わった今、快適なはずのあたたかい車内の空気がなぜか少し名残惜しく感じたのは印象的でした。

スタッフA37

こういう厳しい冬のキャンプも少し憧れちゃいます~

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大変そうだったけど、たまにはいつもと違う雰囲気のキャンプを覗くのもいいね!

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